5年間トップを⾛り続けたVEX⽇本代表チーム「54506D Beast Hunter」の軌跡 ②/③

■世界に対抗しうるロボットを⽬指して

けれど、2⼈は諦めません。挫折から、Beast Hunterは再スタートしました。
2⼈の夢は、再び⽇本代表となって、アメリカでの世界⼤会に参加すること。1年後の2022年5⽉に開催
される世界⼤会を⽬指し、挑戦が始まったのです。
和樹君はテニス部、勇我君は卓球部と、それぞれの部活動の合間をぬって、毎週⽔曜⽇をVEXの練習⽇と
して必ず集まりました。
「⼤会前には週末も集まり、10時間以上練習していた。⼩学校時代より集まれる時間が少なくなった分
、限られた時間を有効に使う⽅法を考え、真剣に打ち込むようになった」と和樹君は話しています。

さらに、「参加した⼤会の動画を⾒直してみたら?」という和樹君の⽗、芳⾏さんのアドバイスを得て
、何度も動画を⾒返し、2⼈で反省点を話し合うことに。試合ごとに細かな調整を⾏い、経験を積んでき
たことで、ロボット製作もプログラミング能⼒も⼤きく向上しました。

この年を境に、2⼈のロボットの作り⽅が⼤きく変わりました。挫折を経験し、世界のレベルの⾼さを知
ったことで、これまでの経験を⽣かした上で⾃分たちの持ち味を⽣かす、いわば、“守破離”の“破”
から“離”へと進んでいったのです。


■ついに世界へ チームで戦うことの難しさと楽しさ

2022年5⽉、Beast Hunterとしては3度⽬となる⽇本代表。ついに世界⼤会「VEX Robotics World Cha
mpionship」出場選⼿として、2⼈はアメリカへ渡りました。

いざダラスへ!
VEX World Championship 2022 / オープニングセレモニー

世界⼤会の舞台は、VEXロボティクス誕⽣の地であるテキサス州のダラス。1万⼈以上収容できるアリー
ナで10⽇間に渡って開催される⼤規模なもので、2⼈はそのスケールの⼤きさと熱量に圧倒されました。
⼤会に参加するチームは、会場内に「ピット」と呼ばれるブースを持ち、ロボットの調整やアライアン
スとの作戦会議を⾏います。他のチームとの交流も盛んに⾏われ、⽇本に興味を持った⼈たちが次々と
訪れます。2⼈は知っている限りの英語を駆使しながら、世界中の選⼿たちと情報交換をしたことも⼤き
な刺激と経験になりました。

初めての世界⼤会では上位⼊賞は叶わず、世界のレベルの⾼さを改めて思い知ることとなりました。
この結果について、勇我君は「トップチームのロボットは、性能を突き詰めた結果、どこも似たような
デザインになっている。だけど、僕たちのロボットはオリジナル性にこだわったため、性能で劣ってし
まった」と分析し、「来年はもっと上を⽬指したい」と強く願いました。
2⼈の⽬標は「世界⼤会参加」から、「ディビジョンファイナル(ブロック決勝)進出」に変わりました。

■最後の世界⼤会で掴んだ⼿ごたえ

VEX World Championship 2023 / オープニングセレモニー


そして、2023年の4⽉。中学3年⽣になった2⼈は、再び⽇本代表としてアメリカへ。
世界⼤会では、⾃らのプログラミングやドライビングスキルを競う「スキルスチャレンジ」と、他の国
のチームと即席でチームを組み、協⼒して課題に取り組む「チームワークチャレンジ」の競技がありま
す。

英語が苦⼿な2⼈にとって⾔語の壁は⼤きく、前年度はコミュニケーションがうまくいかず作戦が⽴てら
れなかったという苦い思い出がありました。けれど、今年は2回⽬にして、Beast Hunterにとっては最後
の世界⼤会。「勝ちたい!」という思いで必死にコミュニケーションを取り、国を越えて共闘していき
ました。

アライアンスチームとハイファイブ!

努⼒の甲斐あって、Beast Hunterは上位20チームのみが出場できる「ディビジョンファイナル」まで勝
ち進みます。そして、最後に組んだのは、それまでの結果がふるわず、すっかり戦意を喪失していたチ
ームでした。

「いいロボットを作っていたチームだったのに、組んだチームに恵まれず、すっかりやる気をなくして
いた」と、2⼈はその時の様⼦を話しています。「チームワークチャレンジ」では、チーム同⼠の相性も
重要な鍵です。

そこで、2⼈は相⼿に「絶対にディビジョンファイナルに進みたい」という思いを伝え、
メンバーを励ましながら、時間いっぱい作戦を⽴て試合に挑みました。
その結果、合同チームは⾼ポイントを取得。「⼀番最後の試合で、最⾼のスコアが出せた!」と⼤喜び
する相⼿とともに、喜び勝利を分かち合いました。

ディビジョンファイナル暫定一位!会場は大歓声!

この世界⼤会で、2⼈のBeast Hunterは⽬標としていた「ディビジョンファイナル進出」へ。さらには最
⾼得点で暫定1位の座を勝ち取りました。残すは、上位チームだけが参加できる「アリーナ決勝」まであ
と⼀歩というところまで進みましたが、残念ながら、後半で⾼得点のチームが登場し、Beast Hunterの
挑戦は終了しました。

それでも、世界⼤会を終えた2⼈の顔に悔いはありません。
「良い結果を出そうと、頑張って沢⼭作戦を話し合った。そうしたら、⾃分たちが思っていた以上の結
果を出せたのが楽しかった」と和樹君は晴れ晴れとした顔で話してくれました。

こうして、1年前の世界⼤会で悔しさを抱えて帰国した2⼈は、再び訪れた最後の世界⼤会で全⼒を出し
切り、悔いなくBeast Hunterとしての活動を終えたのです。

つづく….

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